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鳥居

話の類似点

 話の類似点



 次に、「闇にその名を呼べば……」「七週間」それぞれの内容を紹介し、その後、2作品間の類似についての検討に入る。



「七週間」

 主な登場人物はシリーズ主役の常磐矩成、この回の主役の菊華、幽霊となって菊華のそばにいる兄の翔太。

 物語は翔太の葬式のシーンからはじまる。サッカー部に所属していた吉井翔太は部活の帰りに交通事故で死んでしまったのだ。だが、死んだはずの翔太は霊としてこの世に残り、妹・菊華のそばで生前と変わらぬ生活を送っていた。
 死んだ生徒の霊が現れるということで、除霊を学校に依頼された常磐矩成は、翔太の霊がこの世に留まっているのは妹を想ってのことだと推測する。
 死んだはずの兄の話を今でも生きているかのように語る菊華を可哀想に思い調子をあわせていた菊華の友人達も、実際にサッカー部の試合に乱入してシュートを決める翔太の霊を見てしまっては気味悪がって菊華から離れていってしまう。

 途中、兄が死んだ時の回想シーンも挿入されている。
 警察からの連絡で身元を確認に行き兄の無惨な亡骸を見てしまった菊華は、兄の死を受け入れられずにパニックを起こしてしまう。菊華の呼ぶ声に引かれた翔太の霊は、守ってやるからと菊華を抱きしめる。

 その後の事件で、常磐がその気になればいつでも自分を祓ってしまえたのだと知った翔太は、どうして祓ってしまわなかったのかを問う。その問いに対して、無理矢理祓うのではなく自分自身の意志で昇天して欲しいと語った常磐は、菊華に、死者の魂が自分の力で昇天できるタイムリミットが49日であることを告げる。明日がその49日目であり、自分こそが兄の魂を引きとめていたのだと気付いた菊華は、涙を見せずに別れを告げることで翔太の魂を解放できると言われて、翔太に別れを告げる。
 翔太が昇天していくシーンには菊華の「Bye Bye」という台詞と「世界中で一番好きだったよ」というモノローグがかぶっている。



「闇にその名を呼べば……」

 主な登場人物はシリーズ主役の番人、旺美、旺美の恋人・基、旺美の友人・ちひろ、ちひろの兄・浩生。

 高校生の旺美(あきみ)は、友人のちひろから兄の話をよく聞かされていた。ところが、ある日会ってみたいというと、いつもは物静かなちひろに激しい調子で拒まれてしまう。その様子を奇妙に思ってちひろの家を訪れた旺美は、ちひろの兄・浩生は既に死んでしまっていること、ちひろは兄が生きていると信じて幻を見ていることを聞く。

 途中、兄が死んだ際の回想シーンも挿入されている。
 サッカー部の練習をしている兄を迎えに来た幼いちひろは、道路に転がったボールを追って飛び出してしまう。ちひろをかばった浩生は、ちひろの目の前で車にひかれて死んでしまい、自責の念とショックの為その現実を受け入れられなかったちひろは幻の兄を作りだしてしまった。

 成長するに従って幻と現実との間に齟齬が生じ、自分が見ている兄は自分の創り出した幻で本物の兄は既に死んでしまっているのだと気付きはじめたちひろは、罪悪感から、兄がそこにいて受け止めてくれるのだと学校の屋上の端に立つ幻の兄の胸に飛び込んでいき、墜落死してしまう。
 何の思い残しもなく昇天するはずだった浩生は、ちひろの最期の想いに引きずられて生と死の狭間の部屋に来てしまっていた。番人は浩生を昇天させる為に、ちひろがまだ生きている時間に送りこむ。浩生の魂は腕に飛び込んできたちひろをしっかりと抱きとめて、ちひろの幸せを祈っていると告げて昇天する。
 兄の魂が昇天するシーンにはちひろの「世界じゅうでいちばん好きだったお兄ちゃん ありがとう そして…… さようなら……」というモノローグがかぶっている。




 仲の良い兄妹の兄が死んでしまう、兄の死因は交通事故である、兄は生前サッカー部に在籍していた、兄の死という現実を受け入れた妹が兄の昇天を見送る学校でのラストシーン、と、ストーリー中に使われているモチーフが共通している。

 ただし、ストーリー全体で見ると、少し似ているという程度の印象になるのではないかと思う。片方は本物の霊でありもう片方は最後以外は幻である、片方は兄が死んでから数週間しか経過していないがもう片方は数年が経過している、兄と妹の年齢差が片方は3歳程だがもう片方は10歳程であるなど相違点も多い。台詞をみても、そっくりと言うほど一致しているものはなく、敢えて言うなら兄を見送る妹のモノローグが似ている程度なので、この程度の類似であれば偶然起こることが十分考えられる。


 事実、池田さとみ著『外科医東盛玲の所見』というシリーズ中の「眠り」という作品は、仲の良い兄妹の兄が交通事故で死んでしまい、現実を受け入れられなかった妹が夢の中で兄が生きている世界を作り出す話で、サッカー部に在籍していたという記述こそ見られないが、話の途中に兄がサッカーをしているシーンもある。
 少なくとも「仲の良い兄妹の兄が死んでしまう」「兄の死因は交通事故である」という点に於いて、3作品は共通していることになり、特に珍しいモチーフではないと言えよう。
(「眠り」についての詳細は後の「似通った設定だと必ず絵も似るのか」で。)


 
 
 
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